僕は今まで、何度か引越しをしてきました。小、中、高、大と実家から通い、社会人になっても数年、実家暮らしでした。まず最初の引越しは、結婚した時です。二人の新居である、分譲マンションに引っ越しました。とはいえ、実家から車で十分そこそこの距離だったので、あまり引越したという感覚はありませんでしたが。それからやんごとなき事情で、その新居を引き払い、賃貸マンションに引っ越しました。それから数年後に、残念ながら離婚し、今度はひとり暮らしのアパートに引越し、そこで一年過ごした後、結局実家に舞い戻るという結果となりました。僕が生まれてから今までずっと、実家は、多少形をかえたものの、同じ場所にありました。やはり実家というものは安心するものです。帰ってくる場所があるというのは、嬉しい事なのです。しかししばらく父と二人暮らしだったのが、今度は父が再婚し、新しいマンションに引っ越しました。

つまり、実家にひとり暮らしという、ちょっと珍しい構図が、ここに完成したわけです。しかし、僕とほぼ同い年であるこの実家は、決して新しいほうではないのです。ひとり暮らしをはじめてからというもの、ところどころ痛んできました。ある日、会社から帰ってきて、シャワーを浴びようとしたら、お湯が一切出なくなりました。給湯器が故障したのです。この給湯器は、実家がたってから、一度新しいものに交換されてはいるものの、それから二十年以上たっているのです。壊れて当然でしょう。僕は早速、ガス会社を呼びました。しかしガス会社の人から言われた言葉は、かなり衝撃的なものでした。「古すぎて、交換用の部品がもう作られていないので、新品を購入する必要がある」との事だったのです。そして、新品を購入するには、数十万かかるというのです。僕にそんなお金もありませんし、父ももう、実家にお金をかける気にはならないと突っぱねてきました。

このままでは、僕は毎日銭湯通いをしなければなりません。月いくらかかることか、想像すらしたくありません。なんとかならないものかと、ガス会社に泣きついたところ「水流センサーなら、部品があるので、一度交換してみますか?」との事だったので、お願いしました。すると、お湯が出るようになりました。さすがは給湯器のプロだと、感心しました。しかし「次壊れたら、もう新品買うしかないですよ」と言われました。僕は毎日、給湯器が壊れない事を願いながら、お風呂に入っています。